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「………ふぁーあ…」
くぁっ、と大口を開いて欠伸を垂れる目付きの悪い青年が1人、被っている黒のフードに手を入れて、頭をぐしゃぐしゃと掻きながら、煉瓦造りの街中を、ゆっくりと、気怠げに歩いていた。
時刻は午後二時。天気が良く、潮風が爽やかで気持ちがいい。
煉瓦造りのオレンジと白の町並みは、今日も市場が賑やかで、活気に満ちている。
(昨日終わった仕事で半年は遊んで暮らせるな…。にしても仕事が夜中ってか、朝方頃に終わりすぎて流石に………)
「寝みぃ……」
くぁっ、と欠伸をまた一つ。
目の下にクマを作った青年は、元から目付きが悪いが、それのせいで更に目付きが凶悪になっていて、そのお陰か、賑やかな市場街を歩いているというのに商人は1人も、彼には声を掛けないのだ。
(さっさと飯買って、家帰って寝るか………)
そんな事をぼーっと考えて、適当に歩いていた時。
にゃーん、と猫の鳴き声がやけに印象深く、謎めいて、彼の耳に届いた。
そんな猫の声を聞いた青年は、吸い寄せられる様に、半端強制的なくらいに、その声のする方へ視界を傾け…。
「…………………あーぁ……」
片手を、フードの被ったままの頭に乗せ、それからぐしゃり、とゆっくり軽くフードを掴んで、青年はそれはそれは怠そうに声を漏らした。
そこに居るのは黒猫1匹…。
と、一般人なら言うだろう。
しかし彼は違う。そういう者が"視える"体質だ。
しかも彼は"視える"力を生業としているから普通の"視える"よりもっと視えるし、聴こえだってする。
『ちょっとお前、ホントにしつこいぞっ!!!』
そこに居たのは、黒猫と、女性形の〈星霊(せいれい)〉。
彼ならこう、答えるだろう。
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