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14歳
「大変だったね。」
刑事さんが見舞いに来てくれた。
「こんにちは」
卓也は笑顔を返す。
西条の出刃が振り下ろされようという時、
刑事さんが家主から借りた鍵で入ってきてくれた。
卓也は待機していた救急車で病院へ運ばれた。
「君は浮浪者を気にしていたようだけど
僕達はずっと、西条雅人が気になっていたんだよ。」
実は猫殺しの現場で青いベレーの男が目撃されたのは最近で、
それまでは小柄な、若い男が目撃されていた。
刑事たちが卓也の話をもとに調べ
西条に話を聞こうと学校を尋ねたところ、卓也を伴って
下校したことが分かり、アパートに直行したという。
「サイコパシー傾向が高いって言うらしい。」
刑事が帰った後、卓也の父が枕元で言う。
「辛いとか苦しいとか恐ろしいとか、
人がそういう感情でいると分かっても
思いやりがないんだそうだ。
人より不安や恐怖心を感じにくいから
危険な事をやってのけたり、
責任重大な判断を冷静に下せる、という特徴もあるそうだ。
嘘を言って自分をよく見せたい、嘘がばれても平気、
利用価値のある人間は守る。
そんな事ばかりしているから人が離れて行って
孤独感にさいなまれる事があるらしい」
父親が世界を股に掛けるエンジニア、母は大学教授と言うのも
嘘だった。
父親は酒癖が悪く、酒が入ると雅人母子に暴力をふるっていたという。
定職にはついていなかった。
雅人が中学校に入ると離婚し、母子で引っ越してきた。
雅人が卓也に見せた痣は父親に付けられたものらしい。
母親は猫が殺され始める少し前、男と姿を消した。
時々通帳に金が振り込まれ、
西条雅人はその金で生活していたという。
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