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「西条はこれからどうなるの?」
「中二だからな。
誕生日前なら児童相談所送致、その後処遇が決められる。
誕生日を迎えていれば…警察で取り調べだ。
…そのサイコパシー傾向っていうのはだいたい14歳ころから
出てくるらしい」
「ふうん…」
気の毒な気もするけれど、もう関わりになりたくない。
眩しい陽光の中、血の臭い、死体の腐る臭い、
吐瀉物の臭い。
血のしみ込んで硬くなった新聞紙、
まな板、ぎらぎら光る包丁。
押入れの、死体を解体して入れた黒い袋。
西条一人であの部屋に幾晩寝たんだろう。
卓也には
浮浪者が風を通し、自転車を置いて暮らしていた洋館より、
西条が住んでいた部屋の方がよほど廃墟に見えた。
「明日は退院だ。早く忘れなさい。」
父が言う。
でも卓也は、
西条が独りで呼吸し、眠り、食べ、殺していた
あの廃墟を
忘れようとしても一生忘れられないだろうと思った。
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