彼と彼女の海は憂鬱

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**Boy’s Side**  マサキは憂鬱だった。またあの季節がやってくる。生まれてこの方、楽しい気持ちで夏を迎えたことはない。  プール授業。この世で最も辛い時間。 「何でなんだろうなあ。」  成績は上位、運動もたいていは上手くできる。友達もいっぱいいる――野郎ばっかりだけど。正直、何でもこなせる自信はある。しかし、水泳だけはなぜか上手くいかないのだ。天は二物を与えず。親友にはそう言ってからかわれた。 「まあ…泳げなくても、死にはしないし。」  普通に生活していれば泳げなくても何の支障もない。わざわざ好き好んで海やプールに行かなければいいのだ。カナヅチでも全然大丈夫。余裕、余裕――
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