彼と彼女の海は憂鬱

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**Boy’s Side** 「俺を誘うなよ。泳げないの知っているだろ?」  マサキは愚痴った。親友のタケから海に遊びに行こうと誘われているのだが、なかなかしつこい。 「そんなんじゃ、恋もできないぜ?」  タケは思春期の男子の例にもれず、「夏といえば海!海と言えば恋!逆もまた然り!」という健全な思考の持ち主だ。  いや、俺だって――マサキは思う。好きな人と過ごす夏の海なんていうのに興味がないわけではない。 「ところで、ちょっと暑くないか?クーラーもうちょっと効かせればいいのに。」 マサキは話題を変えようとした。 「暑いな。でも、下げると女子から文句出るからなあ。――って話を逸らすなよ。」  すぐにバレた。誤魔化し笑い。話題が戻る。男同士で恋話なんて―― ――でもまあ、初夏の陽気にあてられてほんの少し高揚した気分が、ちょっとだけ心地よい。
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