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意識がゆっくり浮上する
「ここは……」そう言って辺りを見回す
辺りは真っ暗で目の前にゆらゆら揺れる
小さなろうそくに灯された炎だけが見える
……少しずつ意識がハッキリしていく
それは目の前にロウソクの乗ったテーブルが、そして、自分が拘束され動けない状態で座らさせられているという事に
目も慣れてきたが目の前に円形テーブルがある事しか分からない
「死んだ…のか?」
死後の世界なんて知る由もないもしかしたら、天国、地獄は無く、こんな場所なのかもしれない
「そう思っとるのなら期待外れじゃな」
唐突に暗闇から中性的な声がする
「誰だ!」そう叫び身体を捻るが動ける気配は無い
コツ…コツ…と床を踏む音の後
小さな炎に照らされたのは黒いローブを羽織った
人影が現れる。せいぜい標準的な体格であることしかわからない
「ソナタは復讐を望んだのだろう?」
その言葉で自身に何が起きているのか分かった
「そうだ」
ここに来た目的を果たす為に返答する
それから間髪入れずに質問を投げかけようとした
しかしその言葉は遮られた
「それを成し遂げるためにソナタはこれを飲まないといけない。引き返すなら最後だ。もし契約すると言うなら覚悟を示せ。これを飲んだあとは後戻りできないという事を戒めよ」
そう言い黒ローブは動き、自分の前のテーブルに
深紅の宝玉とも言えるとても小さな綺麗なものを置き元の場所に戻る
呆気に取られたいた為、殆ど容貌は見えなかったが裾から覗いた手は年寄りのものではなかった
’カチリ’そんな音がする
そうして右腕だけ動くようになった
「これを飲めばいいのか?」そう訪ねる
しかし返答は無い
「これを飲むとどうなる?」大事な所を聞く
これにも返答は無い。話す事は話し切ったそんな風に取れる
(覚悟を示せ、後戻りできない…か)
それを手に取り眺める
とても小さく一飲み出来るのは間違いないだろう
それはとっても真っ赤で蝋燭の小さな光源を反射して、妖しく輝いて見える
ここまで来て引き下がるという選択肢は自分には無い。これがどのような結果を生んだとしても
それを口元に運び、躊躇いなく口に放り込み
そして……飲み込んだ
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