カフェオレ

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 この季節になってくると、喉の渇きに癒しを求めて、販売機の前に集まる生徒の数が多くなる。  錦見(にしきみ)伊織(いおり)も例外ではなく、現在、授業合間の休み時間に、必要枚数の硬貨を握って一階へと歩を進めていた。  普段、伊織はココアなどの甘い飲み物を好んで選ぶ。今日はフルーツ系統のものに指針が向いているため、イチゴミルクやバナナオレなどの中から決めようと思っていた。  販売機のエリアまでやってくると、そこには先客が一人。伊織はその後ろ姿を見て、あっと目を光らせた。  履き物の色から一年生だとわかる、きれいに切り揃えられた髪が特徴的な男の子。身長自体はさほど高くないのに、脚の長さが目立って、その立ち姿はどこか美麗だ。  伊織は何度かここの販売機で、あの一年生がブラックコーヒーを手にするところを見かけている。苦いものには嗜みがない伊織にとっては非常に印象深いものだった。  自分はせいぜい、コーヒー飲料はカフェオレが飲める程度。名前もクラスも知らないが、自分より年下がコーヒーを飲むなんていなせに思えて、無意識のうちにその顔を覚えていた。  すでにボタンを押し終えていたらしく、一年生は取り出し口に腕を伸ばしていた。  しかし怪訝なことに、何故かそこで腰をかがめたまま、ぴたりと固まって動かない。
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