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 少女漫画では、冴えない女子がクラスの人気者の男子となぜかラストくっついてめでたしめでたしで終わることがある。  だが、現実にそれは皆無といって良い。少なくともユリは、これまでそんな光景を見たことがない。  ユリは、常に広瀬を目で追ってしまうから、広瀬が気に入っている女子もなんとなくわかる。クラスの一軍女子、中村アリサがそれだ。広瀬は、アリサを正面から口説くことはできないようだが、アリサに聞こえるように大きな声でこんな彼女がいたらなあみたいなことを言ったり、アリサに構ってもらいたい言動をよくする。  広瀬の言った冗談にアリサが笑うと、広瀬は、ものすごく嬉しそうな顔になる。飼い主に褒められた子犬みたいな表情。その顔を見るとユリの心は、ギュッと痛む。苦しくなる。顔だけでなく体全体で喜んでいる広瀬の姿は、なんて残酷なのだろう。だから、ユリの恋が叶うことはないのだ。  ユリの机には、テスト前以外近寄りもしないのに、アリサの机の近くには、なにかと行く広瀬。なんてわかりやすく単純な男だろうと思う。
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