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「そうは言っても。何かに集中してて咄嗟に出られないかもとかいろいろあるでしょ。こっちの都合に構わずいつでも出入りできるようにしておかないと、猫に何かあったら大変だよ」
そう主張されると、そこは強く拒絶もできない。やむなく、猫の状態が安定するまでお預かりします、と呟いて受け取ってあった。
そういう次第で初めてそれを使い、ドアを解錠して中に入ると。何のことはない、彼は普通にいつも通りダイニングテーブルにかけてパソコンに向き合っていた。
「…どうしたんですか?一体」
「し、っ」
指を立てて軽く唇に当てる。見ると、その膝の上に。
ちゃっかり鯖模様のぶちのある白い毛の塊が。背中と思しき箇所が柔らかい上下を穏やかに繰り返している。どうやら彼の膝で丸まってそのまま深く寝入ってしまったみたいだ。
「これだからさ。…どうにも動けなくて、さっきから。ずっと」
表情を崩さないながらもどこか満更でもない様子が伝わってくるその顔つき。わたしは半分呆れ、思わず立ったまま仲睦まじい二人を見下ろして嘆息した。
「まぁ、何というか。想像以上に仲良しになったもんですねぇ」
つい先日まで野外猫生活、しかも人間から酷い虐待を受けたっていうのに。出会ってほんの僅かの時間しか経ってない相手をここまで信頼して身を委ねるとは。
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