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「てか、それだと同棲するだけじゃなくて入籍するってことだよね?そんなのあんたに何のメリットがあるの。わたしに住居を提供して、負債を返済して。おまけに好きでもない、恋人でも何でもない女を妻としていきなり迎え入れなきゃいけないなんて。そこまでする必要なくないか。青山くんはこの事態に何の責任もないじゃん。わたしの見通しが甘くて勝手に困窮したってだけなのに」
「そんなことない。得るものがないなんて考える必要ないよ」
こんな話をしてるのに。青山くんはいつもと全く違わない、のんびりした余裕の態度でわたしのバッグを振り回しながら前を向いたまま答えた。
「だいいち、お前と入籍した方が俺も楽なんだ。友達同士じゃ踏み込めない、援助しきれないことかいっぱいあった。そういうのもなくなるから遠慮なく手を差し伸べられるし口も挟める。こんなところまで介入できないな、とかやきもきする必要もなくなる」
わたしは言葉がなかった。この人にそこまで心配かけてた…、ことは。ほんとは薄々気づいてはいた、けど。
彼はほとんど優しい、といっていい目でちらとわたしを見やって続けた。
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