第10章 ミイ、ミヤ、ミウ、ミオ

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「大体さぁ。お前の考え方は現代の風潮に完全に毒されてるじゃん。恋愛あってこその結婚って思えば人類の長い歴史の中でほんの一時期だけ、今の時代限りの奇習だよ?もともと人間は一人より二人の方が生き抜きやすい、食べていきやすいから番いになってたんだから」 言いたいことはまあわかる、けど。…番い、ねぇ。 彼は物分かりの悪い生徒に教えるように親切な口ぶりで丁寧に説明する。 「一人ひとりは弱いけど、組んで二人組になって。腕力のある方が獲物をとりに行って、子どもを産める方が家を守りながらその世話をする。そうやって力を合わせた方が生き残って子孫を繁栄させられるっていう、結婚て本来そういうシンプルなものだろ。そのために恋だのなんだのって別に必要ってわけじゃない。むしろ、曇りない目で自分に最適なパートナーを選ぼうとしたらかえって邪魔なもんじゃないか?昔の人はそれを知ってたから、家同士が決めた許嫁とかお見合いとかって制度を使ってたんじゃないかな」 「うーん…、理屈としては。わからないでもないけど」 わたしはちょっと弱って言葉を濁す。まさか人類の歴史的な大上段から話が始まろうとは。だけど、と内心で釈然としないものを感じないでもない。 生き抜いて子孫を残すために男女が組んだ、ってとこまではまあわかる。けど、そのためにお見合いや許嫁制度を持ってきて説明するのは今ひとつ納得いかないな。     
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