第10章 ミイ、ミヤ、ミウ、ミオ

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家が結婚相手を決めるなんて多分、社会の上澄みのほんのひと握り。大多数は残すべき家名もなんもない人たちだから、結局は集落の中で年齢の近い、ほどほどやっていけそうな相手を見繕って選んでたはず。その過程はそう名付けられなかったから認識されてないだけで、素朴ながらも惹き寄せ合ったから一緒になる、つまりは恋愛だった可能性が高いんじゃないかな。 恋愛否定派の人たちが言うほど人類はもともと恋を知らなかったとは思えないけど。恋愛結婚って言い方がなかっただけで男女が惹かれ合って所帯を持つってことは大昔からごく普通にあったと思う。セクハラやパワハラが名付けられて認識される前からずっとそこに『あった』みたいに。 猫と同じように手近な者同士、盛って番うのだってある意味『恋愛』かも。わたしたちにはそれすらないじゃん。 だから、異性として惹かれなくても結婚できるはずってきっぱり言われると。必ずしもそうでもないんじゃなのとしか…。 「だいじょぶ、俺たちは上手くいく。ちゃんと夫婦としてやっていけると思うよ」 不意に横から手が伸びてきてわたしの頭を撫でたから心底びっくりした。思えばこいつとは気のおけない仲で大抵のことは互いに許容できるって何となく考えてたけど。今までは指一本触れたことも触れられたこともなかった。そこはきちんと節度があったんだ。 これからはお互い触れ合う関係になる、ってリアルな意思表示なのかな…。 押しつけがましくなく軽く触れてから、青山くんはわたしの気を引き立たせるように少し弾む声で話しかけた。     
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