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「こっちで本当に合ってるのか?」
「うん、大丈夫なはず…こんな山奥だとはね」
闇に包まれて鬱蒼とした森――街灯もなく整備されていない凸凹道を、車のライトだけを頼りに走り抜けていく。
「達樹、ほら!あれ!あそこに赤い橋が見えてきた!」
「お、本当だ。こりゃ、地元民でも迷っちまうなぁ」
噂通りの赤い橋を発見した二人は、橋手前で車を停車させて身支度を整えた。この赤い橋の先に、目的の一軒家があると言われている。
「カメラと、携帯…それ位あればいいかな?」
「俺は懐中電灯持った。そんなもんで大丈夫だべ。どうせ、いつも通り何も起きやしないさ」
夏になると必ず、儀式かのように心霊スポット巡りをしている裕子と達樹。恋人同士ではないが、同じく軽音楽部に所属し、スリルを求める事が好きという事が共通し、道内各地を巡っている。そして今回、近場だからこそ行かなかった、この心霊スポットへ行く事になった。
「よし、行くよー!」
「おう!」
懐中電灯を足元に照らしながら、二人は軽快な足取りで赤い橋へと歩いていった。
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