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「せっかく期待して来たのに、やっぱり大した事無かったなー!」
一時間かけて一軒家を歩き回った二人は、残念そうな表情で外へ出てきた。二階建ての洋風な一軒家――玄関には姿見が掛けてあり、一瞬ビクッとする瞬間はあったもの、散らかった家を探検している様なものだった。
「階段を上った先の部屋で写真を撮ると、殺された娘の霊が写るって噂だったのにね!」
「何も起きなかったな。一番怖かったのは家に入る前に、このずらーっと並んだ御札を見た時だったな」
庭先の柵一面に括り付けられている、木製の札――墓場で目にする塔婆(とうば)が家を囲っている光景を目にした二人は鳥肌を立てた。なぜ何百本もの塔婆が家を囲っているのかは、未だ地元民でも分からない。
「確かにー。家に入っちゃえば、大した事なかったね。じゃあ帰ろうか」
「そうだな。帰ろ…おわっと!!」
先に歩く裕子の足元を照らし、自分の足元に注意を払っていなかった達樹は、石段で躓きバランスを崩した。柵の方へ倒れる身体を支えようと、咄嗟に塔婆を掴んだ達樹――手に力を込めた瞬間、右手で掴んだ塔婆がバキッと鈍い音を立てて二つに折れた。
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