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「もう、何やってるのさー。呪われても知らないからね」
折れた塔婆を元に戻そうとするが、戻る訳も無かった。気持ちだけでもと思った達樹は、周囲に生えている草を紐の様に巻き、折れた部分を繋ぎ合わせた。
「…まぁ、これで良いだろう」
「これで帰り、事故ったら達樹のせいだからね」
「はいはい、すみませんでした!よし、じゃ今度こそ帰ろう」
何事も無かったような顔で、裕子と達樹は来た道を戻った。公衆トイレの前を通り、砂利道を歩き、そして赤い橋を渡る。後ろから白い影がついてくる――という事も全く無かった。
車の扉を開けると、少し蒸した空気が外へ逃げる。
「あちー!エアコン!」
「ねぇ帰り、コンビニ寄ってくれない?アイス食べたくなっちゃった」
「それいい!俺も買って帰るとするか」
達樹が車のエンジンをかけると、蝉の声を遮るようにして、音楽が大音量で鳴り響いた。国民的ロックミュージシャンの曲が、車の扉を閉めても尚、漆黒の闇に響き渡る。運転席、助手席に座った二人は、音楽に合わせて身体を揺らしながら、シートベルトを締めた。
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