ばーちゃんこ

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これは私が福岡県の某夜間高校に通っていた頃の話です。 中学生時代の私は所謂素行不良で、学校をサボってゲームセンターやカラオケで暇を潰しては、そこに居合わせた他校の生徒達と喧嘩になり度々警察沙汰に。夜の街で補導されるのなんてのは日常茶飯事でした。 同級生達が受験勉強に励む中、高校になんか行かん!と豪語し、親に何を言われても聞く耳を持たなかった私ですが、今まで一度も怒られたことの無かった優しい祖母から 「お前みたいな何の技術も経験もない中卒のガキを誰が必要とするとかー!」 と初めて怒鳴られたのをきっかけにハッとさせられ、仕事をしながら通える夜間高校に入学することを決めて受験勉強を始めました。私は、子供の頃から祖母が大好きで、完全にばーちゃんこでした。 結果、受験に無事合格。祖母は泣いて喜び、私の好物という好物を食卓に並べて入学祝いをしてくれました。 ……それから数日後、まるで私の入学祝いをする為に命を繋いでくれていたかのように祖母は心筋梗塞で亡くなりました。多感な時期で、人前で泣くのほど恥ずかしい事は無いと思っていましたが、祖母の通夜では人目もはばからずぼろぼろ涙を流し、手を合わせて心の中で何度も“ばーちゃんありがとう、ばーちゃんありがとう、ばーちゃんありがとう。”と繰り返しました。今思い返しても、物心ついてから今までで一番泣いた日です。 しかし、実際、夜間高校に通いだすと、新しい友達もたくさん出来て私の生活はまたすぐに乱れ始めました。同級生の年齢もバラバラで車持ちの生徒もたくさん居るし、皆仕事をしていてお金も持っている分、中学生の時よりむしろタチが悪い。 いつの間にか学校は友達との待ち合わせ場所と化し、1時間目終わりの給食だけ食べて誰かしらの車で遊びに繰り出すのが当たり前となっていました。 入学から3ヶ月が経った初夏のある日。 いつものようにとりあえず食堂で集まり、給食を平らげ、年上のクラスメイトが運転する車に乗り込んで、運転手含む男3人女2人の計5人でノープランのまま学校を後にしました。
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