1

5/9
前へ
/9ページ
次へ
 女房たちの中では、これまた私がいただく文が多いので、先輩がたに微妙に白い目で見られてるのもやりにくい。でも同じく言ってやるわ。  鏡を見ろよ、鏡を。  お前は若紫かよ。花散里でもない。末摘花じゃないか。  中身を見ることもなく文の山を曹司にほったらかしにしていたら、同じ曹司の賢子ちゃんに取られて母のところに持って行かれた。 「あら。この人は昔ね、」って、どいつもこいつも母のお古なの!  私の光の君はどこにおられるのかしら。  もちろん、母のお古じゃない人も一人二人文をくださった。しかし、左大臣さまの息子の一人、権中納言の教通の君はちょっと良いなって思うと言ったら、母がふざけて返歌を返したから、さあ大変。  それ以来、私がどれだけ一生懸命和歌を作ろうが、「母上が作ったのだろう」と言われるんだから頭にくる。  それこそ終末、この世の終わりじゃないの。  それが幸いなことに、浮名を流しに流した母も、左大臣のおすすめ物件の、前の大和守と再婚して、前の大和守は今度丹後守になったので丹後に行くことにした。 「大和ならまだしも、丹後よ?でも、丹後なら都からもそう遠くはないんだし。歌枕でも見てくる」  そう言って、丹後に旅立って行った。  ああ、せいせいする!  帰ってこなくったって良いのよ。     
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加