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離婚したとはいっても自分の娘の裳着の儀くらいは来なさいよ、と父に言われたのか、離れて暮らす母に何年かぶりに会った。そのときに「十四になって裳着も終えたんだし。綾子も皇太后さまに仕えないか」と言われてどうしようかと考えてる。
「和泉式部」の悪名は巷に轟いている。
父と別れた後の二人の皇子(しかも兄弟だよ!?)との恋模様は都で知らない者はいない。さらに藤壺の中宮と呼ばれた頃の、今の皇太后さまに出仕して、さらに多くの公達と浮名を流す始末よ。
左大臣さまも呆れ果てて浮気女と呼んだ。それでも藤壺にいられ続けたのは、その和歌の才能だというけど、十中八九、左大臣さまも毒牙にかけたと思う。
自分の母が紫式部さまならよかったのに。
「どう?賢子ちゃんも出仕するって話よ」
そりゃ、賢子ちゃんのお母さまは紫式部さまなんだもの!
「源氏物語」は読み始めたら止まらない。
私は賢子ちゃんの住む、河原町通りの紫式部さまの邸に行っては書き写した。
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