灰色の街

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失敗したベッドタウン計画 その名残の廃墟群 傾いた広告看板が風に揺られている 固くまぶたを閉ざした信号機 咎めるものは居ないから 消えかかった止まれマークの上、駆け抜けた 安全柵を乗り越えて 座った小高いマンションのへりは 僕が呼吸するたび 亀裂から瓦礫まじりの咳をする そんなに煙たがらなくていいだろ、なんて 非難と悲嘆の意を込めて 投げ出した足を振り下ろそうものなら世界は回る 僕だったものを置き去りにして 代替品に溢れたこの世界で 息をするのがやっとな僕を 必要としてくれる人はいるのだろうか 差し出された手をとって 行き着いた先がゴミ捨て場なら 泣いてもいいんでしょうか 考えるだけ不毛と切り捨てても 後悔しないかと 不安の種が芽吹き 眠れない夜は決まってここへ来る 朝焼けに染まる灰色の街 壁が剥がれ落ちた傷跡すらも輝かせて見せるから ひょっとして僕も、と 希望を持たせられるんだ 不安の芽が希望の蕾をつけるんだ
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