君を走らせに来た

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君を走らせに来た

カンカンカンカン ガタン ゴトン ガタン ゴトン 目の前の踏切の中を電車が走る 夏の夜の町中 じっとりとした空気 僕の背中には白いシャツが汗で ベットリと張り付いている 右手にクタクタのジャケット 左手に沢山の書類で口が閉じなくなった革鞄 それと机やロッカーに入っていた私物を 詰め込んだ重い紙袋 僕は今日会社を退職した 「遠藤くん、わかってるだろ?」 あの日課長に肩を叩かれた僕は 泣くでもなく怒るでもなく ただただ クビになる時って本当に肩を叩かれるんだ と 妙に冷静で 「これ…お願いします。 今までありがとうございました。」 僕は翌日 今日の日付を書き込んだ 退職届を課長のデスクに置いていた     
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