君を走らせに来た

3/15
前へ
/15ページ
次へ
踏切から50メートル離れる キッカリ50メートルだ この日まで何度も測ったんだ 村井材木店のシャッターの前 井と材の文字の間 相変わらずこの時間  この通りは人気(ひとけ)は無い 僕は 紙袋から学生時代愛用していた スニーカーを取り出す そしてこんな時 脱いだ革靴をどこに揃えるものなのか 疑問が浮かんだ ここ? それとも踏切の前? 僕が今立っているのはビルの屋上ではなく 材木店のシャッターの前だし 僕が飛び込むのは青空じゃなくて このねっとりとした夏の夜の踏切だ 取り敢えず足元に揃えた ボロボロの革靴をみていると 自然とそれが僕自信に重なって 涙が零れた 磨り減ったんだ もう前に進めなくなるくらい 僕は自殺を決行した
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加