霧幻

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   後日、改めてローカル駅に到着すると休憩所に向かった。一服しながら地図を取り出す。とりあえず前回の場所を確認しようと思う。柱にとまっていた蝉が飛んでいったので出発することにした。  直進から右折に入ると小さな橋が見えた。ここまでは前回と同じだ。そのまま道なりに進むと道が細くなり、とうとう行き止まりになった。  おかしい。前回は道が途切れることはなかった。そういえば薄霧が出ていたから他の道に入ったのだろうか?  後退して橋まで戻るとやはり道は一本しか確認できない。それもそうそうに行き止まりだ。ここでの探索を諦めて一旦駅まで戻ることにした。  あのときの出来事は夢だったのだろうか。では写真はどうなるのか。しっかり写っていて、とても幻とは思えない。やはり実在していると考えるのが妥当だろう。  駅まで戻ると左折の本来の情報の道を行くことにする。しばらくすると山道に入り、山の中腹に差し掛かったところに見えたのだ。  「ここだ!」  この景色には見覚えがある。この看板にもだ。ただやはりおかしい。看板は朽ち果てて原型を留めていない。建物も倒壊しており一面草が生えている。僅か数日の間にここまで変化することはない。辺りを捜索してみるも風化してしまっている。40年も経っていれば無理もない。  「んっ?これは」  正面横に何かある。崩れてはいるが原型はある。犬小屋だろうか?こんなものは前回無かった気がするのだが。結局それ以上の発見をすることは出来なかった。ここで一体何があったのか。次に聞き込み調査を行うことにしたのである。  聞き込みをしてみるも、あの建物のについて知っている人はいなかった。それどころか心霊スポットの噂すらなかったのだ。こんな奇妙な手ごたえは始めてである。  あの建物について唯一知ってそうな人物の情報を掴めたのでその場所へ向かった。そこはほど近くのお寺である。  「すいません」  お寺の境内で僧侶に声をかけた。  「はいはい」  お寺の住職である。大分高齢なので40年前のことも知っているかもしれない。挨拶をしてあの建物の経緯について聞いてみた。  
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