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 ボクはいちこちゃんに向かって手を伸ばした。いちこちゃんもボクに手を伸ばす。箱の中は柔らかくて温かかった。それにすごくいい匂いがしていた。ボクたちはお互いの無事を確認しあうように身体を触り、それはすぐにくすぐりっこに発展した。  やっと会えたね。  うん、やっとだね。  くすぐりっこに疲れると、ボクたちはおしゃべりをはじめた。  ボクはいちこちゃんと一緒に、天国っていうところに行くみたい。ボクが言うと、いちこちゃんが微笑んで頷いた。  それはボクにしかできないことなんだって。ボクは誇らしく胸を張った。それから天国について、誰かが言っていたことをヒントにしながら話し合う。  たくさん美味しいものが食べられるんだって。  きれいなお洋服もいっぱいあって。  おもちゃもたくさんあるみたいだよ。  もう痛くないし。  悲しいことも起きないって。  だとしたらなんでおじいちゃんたちは泣いているのかな。  ね、不思議だね。  もしかしたら王子さまも天国にいるのかも。いちこちゃんが目を輝かせる。  きっとそうだね。ボクは答えた。  そうこうしている間に朝が来て、たくさんの人がまたこのホールにやってきたみたいだった。ボクたちは箱の中で耳を澄まして、外の様子を伺っていた。へんてこな歌のような呪文のような声がずっと流れていて、その中でまたたくさんの人が泣いているみたいだった。いちこちゃんはその人たちの上にもたくさんの綿毛を降らせていた。
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