2/3
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
 しばらくすると箱の蓋が開いて、眩しい光の中、いろんな人の顔が覗いた。みんながボクたちにお花をくれた。いちこちゃんは、一人ひとりにさようならと挨拶をしていた。  最後に顔を覗かせたのは圭介だった。圭介は潤んだ瞳でいちこちゃんを愛おしそうに見て、その頬にそっと触れ、それからボクのほうを見て「頼んだぞ」と言った。  任せてよ、とボクは答えた。  箱の蓋が完全に閉じられ、ゆらりと浮き上がり、それから長い時間をかけてどこかに運ばれているのがわかった。  怖い? いちこちゃんが訊いた。  ううん、ちっとも。ボクは答えた。  あたしはね、少しだけ怖い。いちこちゃんが言うので、ボクはいちこちゃんの手をしっかりと握りしめ、ボクがついているから大丈夫、と言ってみた。  巻き込んでごめんね。ボクの手を両手で包み込むようにしていちこちゃんが言った。ボクは握る手に力を込めて、いちこちゃんの目をまっすぐに見た。  ボクは嬉しいんだよ。またいちこちゃんと一緒にいられるんだから、今は最高の気分なんだ。  なんだか王子さまみたいだね。  いちこちゃんが笑うから、ボクは有頂天になって、胸の中の鈴をりんりんりーんと響かせた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!