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自分以外に人はいなかったと思ったけれど、今誰か喋った…?
そういえば、こんな怪談なかったったけ。一人でいたはずなのに後ろから気配がして振り返ると…
怖くて後ろが向けないよ…!
どうしよう、お化けがいたら。え、走れば逃げられる?いやでも、背後が気になってお詣りどころじゃない…よしっやるぞ!わたしは振りかえるぞ!
混乱した頭は冷静な考えなどできず頓珍漢な答えを出した。
強気な心とは裏腹な動きで、恐る恐る顔を後ろへと向けるとそこには同い年くらいの男の子が不思議そうな顔をしてわたしを見ていた。
それを確認したとたん、どっと力が抜けた。
良かった…お化けじゃなかった…足も二本ちゃんと地面についてる…。
そうだよねお化け云々の前にわたしには特殊な能力とか霊感なんてものは備わってないただの小学生だった…。
「ひどいな、お化けでも見たような顔をして」
彼はそう言って笑顔になった。
目の前の彼を観察して、ふと相手が浴衣を着ているのが気になった。町にもお祭りはあるって聞いていたけれど、今日じゃなかったような…。
わたしの感覚では、浴衣を着るのはお祭りの時だけだから変な感じがするけど、目の前に立つ存在にはとても似合っていてしっくりした。
それに、女の子みたいにきれいな顔してるなぁ。なんというか、第一印象は不思議な雰囲気がある少年だった。
「びっくりはした…かな」
「それは悪いことをした。見ない顔の女の子がこんなところにいたから気になってね」
「えっと…夏休みの間だけおじいちゃんとおばあちゃんのお家で過ごさせてもらうことになって」
「なるほど、それは僕も知らないわけだ」
男の子は一人納得した様子で頷いた。
わたしに声をかけたのは誰だか知りたかったからなのかな。…だとしても後ろから突然声をかけるなんてやめてほしい…本当に怖かったんだから。
「もう少し話していたいところだけれど、そろそろお帰り。もう逢う魔が時だ。子どもが一人でここにいるのは良くない」
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