41人が本棚に入れています
本棚に追加
「またね、縁」
え、と思い振り返ろうかと思った時、強い風が吹いた。目も開けられないほどの強風にぎゅっと目を瞑る。風が吹き止み、そろそろと瞳を開けた。
見え込んできた景色には、田んぼとどこまでも青い空が広がっている。
あれ?さっきまで空、暗くなってなかった?
予期せぬことに戸惑い、右足が一歩後ろ下がる。すると足元から、じゃりっという音がした。後につられて下を向くと…
「えぇ?」
いつのまにかわたしは階段下まで降りていたようで両足が地面を踏みしめていた。加えてわたしの横には石碑が建っている。おそらく、来た時に神社の入り口で確認したとおり稲荷神社と彫られてあるんだと思う。それに階段途中には石碑なんてなかったし、見落としたなんてことは絶対にない。
混乱しながらふらりと後ろを向いて、再び度肝を抜かれた。
わたしの真後ろには頂上に着いた時に見えた境内、神社が佇んでいたのだ。そこには見上げるほどの長い階段はなく数段ほどの石階段があるだけだった。
登った時にはあった長い階段はどこに消えてしまったの…?
頭を悩ませながらおじいちゃんとおばあちゃんが待つお家まで帰って行った。
「そりゃあ、狐にでも化かされたんじゃないか?」
家に帰り開口一番に、神社で起こった不思議なことを居間にいたおじいちゃんに伝えたら、笑ってそう言われた。
酒屋のおじさんとさっきまで飲んでいたようで、お酒のはいったおじいちゃんはいつも以上に上機嫌だ。
納得のいかない顔をしているわたしを見ておじいちゃんは楽しそうに笑っている。他人事だと思って大笑いして…怖かったのにぃ。
そんなわたしたちの様子を見ていたおばあちゃんが横からおじいちゃんをたしなめた。
「おじいさん、そんな風に笑うことないでしょうに。ごめんねぇ、縁ちゃん。お酒を飲むとおじいちゃん、笑い上戸になっちゃってねぇ」
「ううん、いいの。わたしも変なこと言っちゃったし…」
そう言いつつもしょぼくれたわたしにおばあちゃんは、もしかしたら、と言う。
「縁ちゃんが会ったのは、もしかしたらお稲荷さんの神様だったのかもしれないねぇ。おばあちゃんもね、縁ちゃんくらいの頃、神社のお祭りで同い年くらいの子どもと遊んでいた時に男の子を見かけたんだ」
その話に、わたしは食いた。
最初のコメントを投稿しよう!