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「その男の子は一人淋しそうにしていたから誘って遊んでいたんだけどいつのまにかいなくなっていてねぇ、周りの子に聞いても誰も知らないって言うんだよ。今思えば、あの子はお稲荷さんの神様だったんじゃないかと思うんだよ」
「それ、本当?」
「あぁ、本当だよ。ふふ、懐かしいねぇ」
そう言っておばあちゃんはにこにこしている。それを黙って聞いていたおじいちゃんはほんのりと赤い顔で頷く。
「確かにまぁ、お稲荷さんと会ったと思っていてもバチは当たらん」
「おやすみ、縁ちゃん」
「おやすみなさい、おばあちゃん」
夜になり、おばあちゃんにおやすみの挨拶をしてから、わたしが使わせてもらっている和室に行く。和室には、布団がもうしかしていてあとは寝るだけ。
わたしはごろんと布団の上に仰向けに寝転がり、今日会ったことを思い返した。
お稲荷さん、かぁ。
あの男の子、もしかして本当に神社の神様だったりして?いやでも、そんなわけないか。おばあちゃんはああ言ってくれたけどもしかしたら町の子どもなのかもしれないし、明日探してみよっと。
それでも見つからなかったら本当におじいちゃんが言っていたように狐につままれたのか、おばあちゃんの話通り神様なのか…。
なんだかこの町に来てからずっと胸の奥がどきどきして止まらない。
はじめて見るものも多くて、知らないことばかりで楽しい。
考えながら天井を眺めていると、窓の方から風が流れてくる。昼間と違って冷たくて気持ちいいな。
外からはカエルの合唱も聴こえる。瞳を閉じ耳を澄ませてそれを聞いているうちに、わたしはうとうととしてくる。
明日、また神社も行こう…。
心地よい睡魔に身を任せ、わたしは眠りについた。
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