夏休み

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待ちに待った夏休みが始まって、早三日。 わたしは絶賛家に引きこもっている。遊ぶ約束をしている友達はいない。というのにも、理由がある。 五年生になったと同時に、お父さんの仕事の関係でこの街に引っ越して来た。 慣れない環境で一から友達を作るのは思った以上に大変だった。前に通っていた小学校はみんな穏やかで落ち着いていたが、転校先は都会なだけあって派手な子が多く騒がしかった。 特に女子は仲良しグループが出来上がっているから、友達作りのハードルは上がる。 その中に入ろうものなら「なんでいるの?」という雰囲気を醸し出されてしまい、居心地の悪さは計り知れない。 女子の世界って想像以上にシビア…。 人見知りというのもあり、早々にどこかのグループに入れてもらうのは諦めた。 なので、学校では常に一人行動。 一匹狼なんて聞こえはいいかもしれないけど、臆病なわたしは最近ニュースで話題にされてるいじめという、あの考えただけでも恐ろしい標的にされないかビクビクしながら学校生活を送っていた。 四ヶ月、目立たないよう過ごし、無事に一学期を終えて夏休み中のわたしだけれど、引っ越してしまったことで前の学校で仲の良かった友達と遊ぶことも出来ず、家の中でクーラーをかけて、だらだらと過ごしていた。 お昼は茹でた素麺を食べたし、夜ご飯はお米食べたいなぁと考えながらアイスを片手にリビングのソファに寝転ぶ。 あと一ヶ月は、学校に行かないでのんびりできるのかぁ。一層の事、ずっと学校が始まらなければいいのに。 窓の外は、ギラギラとした太陽が地球を茹で上げている。それを見ただけで体感温度が数度高くなったような気がして残りのアイスを食べた。 「(ゆかり)そんなとこで寝てたら風邪をひくよ」 その声に、わたしはソファの上で身動ぐ。寝ぼけ眼で声のした方に顔を向けると、スーツ姿のお父さんがいた。 どうやらいつのまにか眠っていたみたい。時計を見ると、針が19時を指していた。 「おかえりなさい。今日はお仕事終わるの早かったんだね」 「いつも一人にしてすまない。晩御飯はまだ食べてない?」 お父さんは申し訳なさそうな表情で言った。 お父さんがわたしを育てるためにお仕事を頑張っているのを知っているから、不満なんてない。もう少し一緒に過ごせたらなぁと、たまに思ってしまうこともあるけれど。
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