夏休み

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お家の中に入ると、そこは違う世界のように感じた。 玄関の作りからしてわたしとお父さんの住みマンションとは違う。 玄関には靴を脱ぐところと上がるところで大きな段差があり、その先から廊下が続いていた。天井も高く、ここからでも見える部屋は広々としていて大きな木の柱が何本もあるのが見えた。 大きな屋敷に圧倒されつつ、お父さんに続いてわたしも靴を脱ぐ。 段差のところに腰掛けて、靴を脱いでいると、右から視線を感じた。そちらに顔を向けると名前も知らない鳥の剥製などが飾られており、目が合う。 剥製を見てわたしがビクッとした。 それを見ていたらしいお父さんとおばあちゃんがくすりと笑ったのが分かった。それでも剥製から目が離せない。 もう生きてはいないはずだが、今にも動きそうでちょっと怖い。 そんなわたしにおばあちゃんが言う。 「その鳥はね、昔おじいさんが知り合いから譲り受けた縁起ものなんだよ。怖いかもしれないけど、悪さはしないから大丈夫だよ」 「そういえば僕もはじめて見た時、驚いたなぁ」 「もう10年も前になるのね。雅彦さんも今の縁ちゃんみたいにびっくりしてたねぇ」 お父さんもびっくりしたんだ…。 おばあちゃんに案内された和室に入ると、そこにはお爺さんがいた。 おじいちゃん、…お母さんのお父さんは座布団の上に座り新聞紙を見ていた。 視線をこちらに向けたおじいちゃんは、かけていた眼鏡を外し黙っている。その目つきは鋭く、ともすれば怒っているようにも見えた。 「おじいさん、雅彦さんと縁ちゃんがみえましたよ。雅彦さん、おばあちゃんはお茶の準備をするからゆっくりしていてね」 そう言うとおばあちゃんは和室から廊下へと行ってしまった。お父さんが先に和室に入り正座すると、おじいちゃんに挨拶をする。わたしも慌ててお父さんの隣に座る。 「お久しぶりです、お義父さん。今日は突然でしたのにありがとうございます」 「こ、こんにちは」 わたしもお父さんに続いて挨拶をした。 新聞紙を机において、こちらを真顔で見ていたおじいちゃんがニカっと笑った。 「よく来たな、雅彦。それから縁も。縁はでっかくなったなぁ!」 そう言うと大きな声で笑った。 怖い人なのかと思ったけれど陽気な人なのかな。笑顔は優しそうだ。それにどことなく写真のお母さんと笑顔が似ている。
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