41人が本棚に入れています
本棚に追加
町探検
「おばあちゃん!これはどうすればいいか?」
「これかい?それはねぇ、こうするといいんだよ。ほら、綺麗に切れただろう?」
お母さんの実家に夏休みの間、置いてもらえることになったわたしは、宿題以外にすることもないのでおばあちゃんやおじいちゃんのお手伝いに専念することにした。
現在、台所にておばあちゃんと一緒に料理をしているところ。
メニューは冷やし野菜うどん、きんぴらごぼうの二品でわたしはそれらを作るお手伝い、というよりも教えてもらっている感じにはなっているけれど、新しいことを知れるは楽しい。
思わず鼻歌が出てしまうくらいには。
「その歌、京子もよく歌っていたよ」
「え、そうなの?」
おばあちゃんからそう言われて、思わず身を乗り出して問いただしてしまう。そんなわたしにおばあちゃんはにこにこ笑って「包丁を持ったまま余所見は危ないよ」と注意した。
京子とは、わたしのお母さんの名前だ。お父さんはよくお母さんの写真に向かって、京子さん、と話しかけている。
「わたし、この歌どこかで聞いたことあってつい口ずさんじゃうんだけど知らない曲だっから驚いた!なんて曲なの?」
そんなわたしの問いかけに、おばあちゃんは首を傾げてうーんと唸った。
「それがねぇ、おばあちゃんもなんて名前の曲かは知らないんだよ。京子は唐突に歌うようになったから、流行りの歌なのかと思ってたからねぇ」
その答えに少しだけ肩を落とした。
「教えてあげられなくてごめんね」
「ううん、おばあちゃんは悪くないよ!大丈夫、いつかなんて曲か分かると思うし気にしないで?」
「縁ちゃんは優しい子に育ったんだねぇ。京子が子守唄にでも歌っていたのを覚えているのかもしれないね」
「そうかなぁ、そうだといいな」
おばあちゃんはにこにこしながら、手を動かして料理の続きを再開する。おばあちゃんに教えてもらいつつ、わたしも手伝う。
それから30分後には2品とも完成し、食卓に並んだ。最初におじいちゃんと会った和室で作ったお昼を食べる。
畳の上に置かれた三人だけでは広々とした大きなテーブルには、おばあちゃん手作りの漬物などもありとても豪華に見える。
どれも頬っぺたが落ちそうなほど美味しくて、ひとりのご飯の時には食べない量をぺろりと完食できた。
最初のコメントを投稿しよう!