焼き芋

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「何かあったのかい?」 気になってお爺さんが訊ねると、女の子は落ち葉を指差し 「今、中に真っ黒になった人の手が入ってるの見えたの……」 と固い口調で答えてきた。 驚いたお爺さんは、慌てて落ち葉の中を引っ掻き回し確かめてみたが、中からは丁度いいくらいに焼けた焼き芋が三つ出てきただけで、人の手などはどこにも見当たらない。 「何もないけれど、見間違えたんじゃないのかい?」 困惑しながら言うお爺さんへ、女の子は「ううん、絶対に見えた」と首を横へ振り、結局誰も焼き芋を貰うことなく帰っていってしまった。 変なこともあるもんだと首を捻ったお爺さんだったが、焼き芋を回収し火の始末をすると、そのまま家へ入りお婆さんと芋を分け合って食べた。 それから約一か月後、お爺さんの暮らす家が火事になり全焼し、焼け跡から焼死した老夫婦の遺体が発見されたという。
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