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A氏は道を歩いていた。会社の行く道中で、たくさん人がいた。A氏は中学、高校と勉強に勉強を重ねて、一流と周りから言われる大学に入り、そして今働いている、これまた一流と言われる会社に入社した。エリートというやつだ。それに加え、勉強だけではなく、働く事に関しても才能に満ち溢れており、入社して五年目になるのだが、早くも役職に就いており、重要な仕事も任される程であった。まさに誰からも敬われる人生だった。
しかし、当の本人にとっては別。A氏にとっては毎日がうんざりであった。やりがいを感じつつも、どこか虚しさがあった。
そういう事情もあり、俯き気味に歩いていた。仕事場にもうすぐ着く、という時に急に辺りが暗くなった。
「あれ」と思うのと同時に、頭にある映像が映しだされた。真っ暗な中に数多くの光っているものがあった。次第には、大きな爆発が起こった。
「なんだ」と、思っていると映像が変わった。マグマがまるで海のように、どこまでも続いていた。さらには、なにやら石のようなものが次々と空から落ちてきた。おそらく隕石であろうが、量が凄まじく多かった。また映像が変わった。次の映像はひたすら雨が降っていた。そして、地上はどこまでも海だった。また映像が変わる。ここからは、生物の映像になった。それも、テレビでしか見た事がない古代の生物ばかりだ。微生物のような生き物から始まり、虫のような生き物、爬虫類のような生き物、次第には恐竜が出てきた。その映像も瞬く間に終わった。恐竜が終わると、遂には猿人類の映像になった。猿人がどんどん知能のある人に変わっていく様が映しだされた。最終的にはイエス・キリストが十字架に張り付けられる映像。そして、高層ビルが立ち並ぶ今の人類が映し出されて終わった。
A氏はその間立ち尽くしていた。急に現実に戻り、周りを見てみると、他の人達もA氏と同じようにざわざわしていた。どうやら、みんな同じ映像を見たようだ。
そんな人々の思考の機能は一気に停止した。
隕石が落ちてきたのだった。それも地球そのものが消滅するレベルのもので、地球の全生物が息絶えた。
さっきの映像は死ぬ前に見る走馬灯だったのだ。人間が見る走馬灯ではなく、地球の走馬灯。地球の過去の歴史を地球の全生物が見たのだった。
だが、案ずる事はない。こんな事は宇宙ではどこでも、何回でも繰り返している事なのだから。
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