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『もう直学校は夏休みだな。優』
『そうですね。絵美』
学校での美術部の活動を終えた下校時、私は大切な幼馴染みである優に対して、喫茶店の店内で頷くと。
『先の競演会に出展した、私が描いた作品である紫陽花の油絵は、残念ながら佳作だった』
『競演会?』
『公募展。コンクールの事よ北条君』
『あっ、そうなんすか。教えて頂いてありがとうございます。先輩』
今日は喫茶店に、私の大切な幼馴染みである優以外にも。同級生でボクシング部に所属をしている北条と。美術部の部長でもある先輩の女子生徒も一緒に来ているが…。
『説明の補足になるがな北条。部長と優が出展した作品は、入選を果たしている』
私の補足説明に優は、男女を問わずに多くの人間を魅了して虜にしている、柔和な笑みを浮かべると。
『私の作品の場合は、渡り鳥の燕の石膏像という、一種の物珍しさが。競演会での加点に繋がったのだと思いますね』
『私の方は、藤原君と九条さんよりも、コンクールに出展した経験が豊富な点が活きただけよ』
優と部長の説明を聞いて。同級生のボクシング部員である男子生徒の北条は、面白そうに私の顔を見て。
『ようは九条は、先輩と藤原の二人に負けて悔しい訳か?』
喫茶店の席で私の隣に座っている優が、北条に対して警告するような目付きを浮かべたので。私は優を宥める為に軽く首を横に振って。
『不快には感じていない優』
優は私の表情を覗き込んで、私が嘘を付いていない事を確認すると。再び柔和な笑みを浮かべて。
『判りましたね。私の大切な幼馴染みである絵美』
『…一瞬人生が終わったかと思った。助けてくれてありがとな九条』
『芸術家を志す、美術部の部長である私としては。藤原君のあの目付きを、作品にしてみたいと感じるわね』
部長も結構良い根性をしていると思う。
『話題を元に戻すが。梅雨時の題材として選んだ紫陽花が佳作だったから。今度は別の傾向の夏という季節を現す題材を選ぼうかと思っている』
私の話に、北条は頷いて。
『紫陽花の次に向日葵という、季節を代表する花は選ばないって事か?。九条』
北条の話に、私は大きく頷いて。
『その通りだ北条。次の題材として、夏の陽射しが降り注ぐ海の砂浜で、十代の男子の健康的な肉体美を晒す優と北条の男子二人を画材として描きたいと考えている』
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