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直哉はボトルを台の上に置くと、出迎えるために玄関へと向かう。特に期待した様子もなく、サンダルを履いてドアノブに手を掛けた。
扉を開けると、そこにはぽっちゃり体形の男がいた。
あまり外に出ないのか、肌は直哉と対照的に白い。頭一つ分ほど背が低く、緊張しているのか直哉を直視せずに手を弄んでいる。少し根暗そうだという雰囲気はあるが、不潔感はなかった。
「ま、合格かな」
あえて及第点とは言わなかった。
一瞬ビクリと肩を震わせる男に、親指を室内に向けて部屋に入れとジェスチャーをする。頷く男を玄関に招き入れると、先頭に立ってリビングに戻った。
「麦茶しかねぇけど、いいよな?」
答えをきかず、直哉は台所で先ほど置いておいたボトルに手を伸ばす。カップの中の氷は少し溶けていたが、構わず麦茶を注いだ。
少し目を上げると、男はまだリビングの入り口で所在なさげに立っている。
「好きなとこ座んなよ。別に今すぐ通報するってわけじゃねぇんだし」
男に麦茶を渡すと、自分は先ほどまでいた場所に座る。男の方はといえば、迷うようにキョロキョロと辺りを見渡せば、直哉の視界にギリギリ入る床に正座を始めた。
それに驚いてギョッとそちらを見ると、できるだけ小さくなろうと体を丸めている。その萎縮ぶりが可笑しくて、直哉は思わず小さく笑った。
「そこに椅子あんだけど」
「ここで……、大丈夫です……」
ソファを指せば、弱々しい返答が返ってくる。
これ以上は逆効果かと思い、直哉は小さく肩をすくめてみせた。肘置きに頬杖をつき、話の本題に入る。
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