257人が本棚に入れています
本棚に追加
「で、あんた名前は?」
「坂本、和也、です」
「ふーん」
どもりながら、和也が答える。直哉は頭の中で、どんな漢字かを想像した。
「で、どこで俺に惚れたんだ?」
「……」
俯いていた顔がますます下を向き、ぼそぼそと喋るので聞き取れない。
「え、なんだって?」
言葉に注意をしたつもりではあったが、それでも和也に威圧感を与えてしまったらしい。息を飲む音が小さく聞こえた。
それでも質問には答えようと、必死に口をパクパクと動かす。
「オ、オリンポス、で、です」
オリンポスとは、直哉がよく行くゲイバーだった。ママとは大学生からの付き合いであり、人生の先輩と慕っている。
「一目惚れ、でした」
「ふーん、それであんなことしたわけだ」
ジトリと和也の方を見れば、青ざめた顔でコップを握りめている。
直哉にサディストの気はないが、和也の怯えている姿を見るのはなんだか可愛らしく思えてくる。もう少し虐めようと、直哉は言葉を紡いだ。
「で、昨日のあれはどうだった?」
和也は勢いよく顔を上げると、直哉の方に向き直る。その目は見開き、顔は耳まで真っ赤に染まっていた。
その頬を触ってみたいという衝動を抑え、返答を促すように首をかしげて見せた。
最初のコメントを投稿しよう!