第一話 黙ってやるから……

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「で、あんた名前は?」 「坂本、和也、です」 「ふーん」  どもりながら、和也が答える。直哉は頭の中で、どんな漢字かを想像した。 「で、どこで俺に惚れたんだ?」 「……」  俯いていた顔がますます下を向き、ぼそぼそと喋るので聞き取れない。 「え、なんだって?」  言葉に注意をしたつもりではあったが、それでも和也に威圧感を与えてしまったらしい。息を飲む音が小さく聞こえた。  それでも質問には答えようと、必死に口をパクパクと動かす。 「オ、オリンポス、で、です」  オリンポスとは、直哉がよく行くゲイバーだった。ママとは大学生からの付き合いであり、人生の先輩と慕っている。 「一目惚れ、でした」 「ふーん、それであんなことしたわけだ」  ジトリと和也の方を見れば、青ざめた顔でコップを握りめている。  直哉にサディストの気はないが、和也の怯えている姿を見るのはなんだか可愛らしく思えてくる。もう少し虐めようと、直哉は言葉を紡いだ。 「で、昨日のあれはどうだった?」  和也は勢いよく顔を上げると、直哉の方に向き直る。その目は見開き、顔は耳まで真っ赤に染まっていた。  その頬を触ってみたいという衝動を抑え、返答を促すように首をかしげて見せた。
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