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「ところで、羽生様。会長様達の親衛隊に頭を下げたというのは本当ですか?」 不思議な香りのするお茶…たぶんハーブティを飲んでいると、吉本はさっきまでの笑みが消え眉毛をさげ悲しそうな困ったような表情をしていた。 親衛隊と言っても様々で本人と親衛隊の距離が近いところ、話も出来ないほど遠いところもある。俺や村上は近いほうで会長や副会長のところは遠く話もろくにできないらしい。そうなると度々親衛隊内で問題が起きるのだ。だったら近くすればいいと思うけど、そもそも会長も副会長も嫌々親衛隊を許可したらしくそんな簡単にはいかないらしい。 「なんかね。親衛隊がなんかやらかしそうって風紀に聞いたから…。」 風紀の言い方だと、暴力だとか多分大事になりそうな感じの話だったのだ。話を聞いて最初に思い浮かんだのは自分の親衛隊の事。そして村上の親衛隊。この子達が何か暴力だとか問題を起こしてしまうのはとても嫌だと思った。とても悲しいと思った。自分をどんな感情であっても好きでいてくれてる子たちがそんな事をして傷つくのは絶対に嫌だと思ったのだ。負の感情で動いたら絶対に後で後悔する。 「…そうですか。でも、無理はなさらないでくださいね。」 優しい言葉にうなずくと、隣にいた村上が頭をくしゃりと撫でてくれた。 へへへと笑って見せてから、この話は終わりというように「このサンドウィッチとても美味しいね。」と話を変えると「あの二人が作ったのですよ。」と吉本は隣のテーブルにいる二人に視線を向けた。 「本当に美味しい。ね、村上。」 サンドウィッチ頬張りながら頷く村上を見て、二人はとても嬉しそうに笑ったのを見て、もう一度「本当に美味しい。」と呟いた。そして、ここはとても温かい。と。 他の子も交えて少し話をしていると、村上があくびを我慢するように顔をゆがめた。それを見てカーテンがゆっくりと閉められ「村上様、おやすみになってください。」と室内が静かになった。 「俺もちょっと寝ていいかな?」 「もちろんです。おやすみなさい。」 温かい声と笑顔に見送られ、部屋の端にある枕とクッションが乗った広いマットの上に村上と横になった。 此処は眠るのが大好きな村上の為に、親衛隊が準備した部屋なのだ。村上の親衛隊の別名は『お昼寝倶楽部』とても村上に合っていて良い名前だと思う。 俺は、この場所も雰囲気もすべてが大好きだ。
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