時すでに遅くなし

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残り5分。 大通りの先に踏切があって、その脇にコンビニが見えてくる。 正直なところ喉はカラカラだったが、当然飲んでいる暇なんてある訳なくて。 そういえば・・・・・・里美と来たことを思い出した。 昨秋に里美と2人で文房具屋へ買い出しに行ったことがあった。帰り道、コンビニで僕は炭酸系を買ったが、里美はコーヒーを選んだ。 「コーヒーを飲むなんて、結構大人びてるな。」 「普段は大学生のオトコがコーヒーしか買ってくれないからね。」 僕は飲みかけの炭酸飲料を口から尋常じゃないほどの勢いで吹き出した。そんな僕のあまりのリアクションに驚いて、里美は真顔でウソ、ウソと否定しながらこう言った。 「大学生のオトコ、ってお兄ちゃんだから。」 それを聞いた僕はパンクしたタイヤのように力が抜けてしまった。 僕がコーヒーを買い始めたのはそれからだ。共通点が欲しかった。
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