時すでに遅くなし

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それより・・・・・・里美は本当に引っ越すのだろうか。 「引っ越さないよ」と返してほしいと小さく願ってみた。 わざと視線を外しながら聞くのも変なので、僕は何も載せていないプレパラートをセットして顕微鏡を覗き込みながら里美に話し掛けてみた。 「そういや、引っ越すの?」 里美がどんな表情をしているかはわからない。でも妙な間があった。 「・・・・・・知ってたの?」 「いや、さっき誰かが話してたのを聞いただけ。」 ふうん、と彼女の声がしたが、それ以上は一言も発しなかった。たぶん他の部員も次の言葉を待っていたのだろう。結局否定しなかった里美に静かだった理科研究室が一変した。  僕は現実から背けることに決め、突然の喧騒の中顕微鏡を覗き続けた。もちろんレンズ越しに何か見える訳でもないのに。結局騒ぎは収まったのは部長の首にかけていたタイマーが鳴り響いた時だった。
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