side H

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雲間から柔らかな日が差し込む午後の授業中、俺は眠気に耐えながら教師の話を聞くともなく聞いていた。 斜め前の彼は、今日も変わらずきらきらしている。 きれいだなぁ、やっぱり。 何故きらきらしているのかとか本当に俺にしか見えないのかとか、考えても分からないことは放置して俺はもはやこの光景を楽しむようになってきた。 白石くんに直接聞けばいいのかもしれない。しかし何て聞けばいいのか分からない。 「何故きらきらしてるの?」とでも言えばいいんだろうか。 今までろくに会話したこともないのにハードルが高過ぎないか。俺の友人たちみたいに違う意味で捉えられたら面倒だし、そもそもあのきらきらが白石くんにも見えているのかも謎だ。 じゃあ、「白石くんの周りのきらきらって白石くんにも見えてるの?」とでも聞こうか。これはもし彼にも俺と同じものが見えている場合は問題無いだろうが、そうでなければ俺が変なやつに思われる可能性がある。もし俺が逆の立場で同じことを聞かれようものなら何言ってんだこいつって思うし、今後聞いてきた奴を警戒してしまうかもしれない。 いやしかし、聞こうとしていることがことなだけにどのような聞き方をしても結果は同じかもしれない。 今の状態で害があるわけではないので放置していても問題は無いだろうが、少なからず気にはなるものだ。 現状維持か、原因究明か…。 「じゃあここ…浜坂。答えて」 「えっ、あ、はい!」 俺がぼうっとしているのに気づいたのか、突然名前を呼ばれ困惑した。やばい、今どのあたりやってたんだっけ…。話を全く聞いていなかったので解くべき問題がどれかも分からないし、問題が分かったところで解くのも時間がかかりそうだ。 「どうした?浜坂ー。お前やっぱりぼーっとしてたんだろ?」 あああぁぁやばいやばい。あの数学の先生は出してくる課題が面倒くさいことで有名だ。数学のテストはそこまで悪くなかったけど目を付けられたらこれから面倒だなぁ。
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