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俺が抵抗の意を示して少し白石くんの肩を押すと素直に退いてくれたが、それでもやはり少し近い。というか、俺の前に立つ真っ白な彼はこの上なく楽しそうに見える。雪原のようだった頬は春が訪れたように薄い桜色に染まり、ふふっと幼げに目を細め、少し首を傾げて銀色の髪がさらりと揺れる。
初めてちゃんと見た、無表情以外の表情。正確に言えば屋上に出たときから彼の表情筋は歪みっぱなしだったのだが、俺は驚きと困惑でそれどころでは無かった。改めてまじまじと見てみると…やっぱりきらきらしている。物理的にも相変わらずきらきらしているが、彼の笑顔そのものも何て言うか…きらきらしている。
子供のようなあどけなさとどこか妖艶な大人っぽさが混ざり合って、ずっと見ているとそのまま飲み込まれてしまいそうなおかしな気分になる。
じゃなくて!聞かなくちゃ。このままでは本当に彼のペースに飲まれてしまう。
「あのさ!俺の話聞いて」
「ずっと聞いてるよ?」
「おかしなこと聞くけど、笑わないでね」
「ふふっ可愛い」
よし。聞くぞ。気になっていたことを。
白石くんが発した形容詞に関しては聞こえなかったことにする。それについては深く考えるな、俺。
これ以上謎は増やしたくないからな。
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