side H

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斜め前の席に座る白石白人くんは、今日もめっちゃ白い。 名前からして真っ白な彼とは今年始めて同じクラスになったのだが、何しろ目立つ容姿をしているので一年の頃から彼の噂は聞いていた。 陶器のように艶やかな白い肌に、色素の抜けた白い髪。日の光を反射してきらきらと輝くその髪は銀色と言えるかもしれない。少し切れ長で大きな目を覆う長い睫毛も真っ白で、彼が目を伏せる度に雪原のような頬に影を作る。 ただ瞳の色は赤色ではなく良く見ると少し暗いオレンジ色をしていて、アルビノという訳ではないらしい。 まるでファンタジーの世界から抜け出してきたような美しい容姿に誰もが見惚れ、すれ違う度にその姿を目で追ってしまう。 その上聞いた話によると全国模試では常に上位をキープし、運動部に所属している訳でもないのに運動能力も群を抜いているという。容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能と少女漫画のヒーローみたいに三拍子揃った彼は困ったほど非の打ち所がない。 もちろんそんな彼とお近づきになりたい者は男女問わず後を断たなかったが、外見もスペックも浮世離れしている彼に話し掛ける勇気のある者は居なかったらしい。 俺が知る限りでは白石くんに友人らしき友人はおらず、誰かと親しげに話している姿も見たことがなかった。
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