side H

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一年の頃、俺はそんな彼に対してさして興味もなく、すごい人がいるもんだなぁなんて思いながらただ客観視していた。クラスは確か割と離れていて、彼が俺の教室の前を通り過ぎるときゃあきゃあと女子が騒がしくなるからその度にちらりと廊下を覗き見たくらいで、慣れてくると俺は振り向きすらしなくなった。ぶっちゃけ白石くんが何組だったのかも覚えていない。 しかし学年が上がり同じクラスになった今、俺は彼のことが気になって気になってしょうがない。 友人から指摘される程、気がつけば彼の姿を目で追ってしまっているのだ。 授業中、休み時間、掃除の時間、放課後…。気がつけば俺の視線は彼を探し、彼に囚われていた。 見る度に思う。 何故彼はああも真っ白なのだろうかと。ブレザーを羽織る冬服の時はとにかく、夏服になって上半身が白いワイシャツだけになると本当に真っ白になる。袖のところにワンポイントで紺色のラインがあるおかげで白い壁際に立っていても彼を判別できるが、遠目から見てもやはり白い。あれなら夜道で車に轢かれることは無さそうだなとは思う。 もちろん見た目も真っ白な彼だが、名前も気になる。白石という名字は決して珍しいものではないが、白人(しろと)って。 ご両親は一体どんな願いを込めてその名前を付けたんだろうか。フィーリングで付けちゃったのか?やはり彼は生まれた時から真っ白だったんだろうか。何も事情を知らない俺がとやかく言えることなどないが、とにかく白い。白過ぎる。 だが俺が彼を気にする理由はそこではない。寧ろ彼の容姿はあまり重要ではないのだ。 俺が彼を視線で追ってしまう理由。 それはきらきらしているからだ。
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