side H

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白石くんが綺麗な容姿をしているからだとか、相手が魅力的できらきらして見えるだとか恋の病にかかっているとかそういうことじゃない。 彼はとにかくきらきらしているんだ。物理的に。 どういうことか俺もさっぱり分からない。分からないが、彼の周りに結晶のようなものが浮いているのが見えるのだ。ダイヤモンドダストみたいな、映画館の映写機に反射する埃みたいな。そういったきらきらが彼の周りに漂っているのが見える。 一年の頃はそんなもの見えなかったのに。 見えだしたのは白石くんと同じクラスになって少しした頃。 授業と授業の間の休み時間にふと、一瞬彼と目が合った。ダークオレンジの瞳はすぐに逸らされてしまったが、彼が目を伏せる一瞬にきらきらとした何かが少しだけ彼の周りを漂ったように見えた。 その時は流石に信じられなくて、教室の埃が反射したのだろうくらいに思っていた。 しかしそれから度々、同じようなものが見えるようになってしまった。授業中、休み時間、掃除の時間に放課後…。目が合ったのは最初のあの一瞬だけだったが、それ以降俺の視界にはきらきらと舞い踊るものが映り込むようになった。 謎のそれは彼の周りにだけ現れ、しかも心なしか日に日に増えているような気さえする。 ここまではっきり見えてしまうと流石に埃だとか貧血の時に見えるやつだとかで誤魔化すのも無理になってきて、友人に聞いてみたことがある。 「なぁ、すんごい変なこと聞いてもいい?あのさ、白石くんの周り、その…きらきらしてない?」 俺がおずおずと尋ねると友人は呆気にとられたような顔をして、やがて「ふはっ」と吹き出して言った。 「そりゃお前、綺麗だもんな白石くんて。分かるよ、分かるけど何か表現がさぁ…ふふっ。きらきらしてるよ確かに。男から見ても文句無くカッコいいもんな」 「いや違くて!そうじゃなくってマジで物理的にさ、周りにきらきらしてんのが飛んでるんだって!」 「分かる分かる。それぐらいカッコいいってことだろー?まさか人に無関心なお前がここまで白石くんのこと褒めるなんてなぁ。惚れちゃった?」 「だからぁっ!」 これは絶対噛み合っていない。他数名にも同じように返されて俺は確信せざるを得なかった。あのきらきらは、どうやら俺にしか見えていないらしい。
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