side H

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言っておくが俺はそういったあれこれが視える類いの人間ではないし、突然そういった不思議な力が開花したとかそういうことでもない。だってきらきらが見える以外は至っていつも通りだから。決してこの世にあらざるあれ的なものではない。断じてない。絶対違う。五千歩譲ってそうだとしてももっとファンタジー的なやつだと思う。 どちらかと言うとピーターパンの横にいるあの妖精が振り撒いてる粉みたいな、そんな感じのやつだと思う。 あれ、じゃ白石くんも空飛べんのかな。 とにかくそういうわけで、俺は白石くんのことを目で追うようになった。というか、わざわざ見ようと思わなくても教室にいるだけできらきらが視界に入ってくるからしょうがない。 不可抗力だろこんなの。この前の席替えで彼の斜め後ろの席になってしまったこともあり、授業中でも関係なくきらきらが映り込んでくるから本当に気になってしょうがない。 窓から差し込む柔らかい日の光できらきらは更に輝きを増し、一粒一粒が七色に輝いては消えていく。決して派手な光じゃないけれど、絶え間なく繰り広げられるその光景はいつまでも見ていられる気がした。 光っては消え、光っては消え…。 光の短い一生は彼の周囲でだけ幾度と無く繰り返され、儚くも美しい景色を創り出している。 彼が白いことも相まって本当に妖精がいるみたいだ。何の変哲もないどこにでもある学校の、いくつもある教室の風景の中に一席分だけファンタジーな世界が広がっている。 …白石くんって指輪を返しに行く物語に出てても違和感無さそうな見た目してるし、実は妖精でしたとか言われても不思議ではない。いや実際そう言われても困るのだが。 とにかくこのきらきらが見えているのが俺だけなんてもったいないくらい、不思議で面白い光景だ。 夕暮れの入道雲とか、路地裏から見える青空とか、ドレッシングの中の雲海とか。 もはやこの光景も、そういう日常の中に溶け込んだ絶景のひとつみたいな。 ドレッシングの中の雲海って何?と思った人は今度振らないでピ○トロドレッシングの中を覗き込んでみて欲しい。分離したところをよく見ると雲海のように見えて、まるで空の上にいるような気分になれる。まぁちょっと茶色いけどね。 とにかくそんなきらきらした彼から、いや、彼の発するきらきらから俺は目が離せないのだ。
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