1月

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 朝食後、母は小沢の奥さんとおしゃべりの花が咲く。女子会になった。  麻里は数学のノートと教科書を出してきた。家庭教師を要求してくる。歴史や古文では立場が逆になるし、これは断れない。 「この微分と積分てさあ、未だに分かりかねるのよねえ」 「無限微分と無限積分をきっちり理解しようなんて、お釈迦様にケンカを売る孫悟空だよ」 「あたし、孫悟空なの?」  数学をアニメに喩えたので、麻里が目を剥いた。 「これは慣れるしかないのさ。無限小を繰り込むのと同じで、実際に出る答えは近似値でしかないし。割り切れる答えは出ないんだ」 「慣れ・・・て、さあ。中学の時は、慣れが過ぎて、先生に怒られたくせに」 「まだ、覚えてたの・・・」  麻里の反撃に、旭は口を尖らした。  中学の数学の授業で、教師が平均の問題を出した。1から100までの整数を足し、その平均を求めよ・・・と。旭は暗算で答えた、1秒とかからなかった。  旭の解法は、1と100を足して2で割ると50.5となると言う物だった。  実際、1から100までの整数を足して平均を出しても、やはり50.5になる。  教師は旭のやり方を認めず、解法の間違いを指摘した。以来、学校の数学に対して、旭は斜にかまえるようになった。  数学そのものは好きだった。教科書を無視して、図書館に行っては、試験に出ない数学の問題を解いて、一人で悦に入るようになった。
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