1月

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 この日は、学校は午前中で終わり。旭は一人で帰りのバスに乗った。  麻里は、午後、吹奏楽部の練習だ。帰りは夕方になるだろう。  雲が切れて、青空が広がってきた。風は微風。雪が太陽の光を反射してまぶしい、目に悪い季節だ。  旭は家に着くと、コーンフレークで昼食とした。相変わらず、テレビはノストラダムスの話題を流している。 「これは、レーダー観測によるノストラダムスです。核が自転している様子がわかります」  ノストラダムスは太陽に近付くにつれ、大量のダストを放出していた。光学望遠鏡はダストにはばまれ、本体は見えなくなっている。レーダーなら、ダストを通してボンヤリした姿を映し出す事ができる時代。  ノストラダムスの本体は少しねじれたラグビーボール。自転を見ていると、重心点が投影面積の中心とずれている。 「分解しそうだ」 「何が分解するの?」  母の恵美子が茶菓子をつまみながら聞いてきた。 「太陽に落ちる前に、どこかで砕けそうだ。二つの小惑星が合体したのか、別の小惑星と衝突した事があるのか、きれいな球体じゃないもの。太陽に近付いたら、強力な熱線を受けて、弱いところから割れてしまうよ」 「地球の近くでなければ、特に問題無いっしょ」 「そりゃあ、そうだけどね」  母は星の問題に興味は無いようだ。  テレビはバンドの演奏を映した。ノストラダムスに献げる歌・・・とかが始まった。音程を外したような絶叫調、耳が痛くなった。
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