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午後5時、東の空では星がまたたき始めた。
ピンポーン、玄関のチャイムが鳴った。
「コンバンワー」
「こまんたれぶー」
玄関で黄色い声、なまった日本語と定規を当てたようなフランス語が交差した。向かいの家のブリューネ夫人、金髪が美しいシルビーさんが来た。
「旭ーっ、手伝って-」
母に呼ばれて行くと、玄関に大量の荷物が来ていた。
「今夜は、ノストラさんを見ながらパーティよ」
旭は居間と玄関を3往復する事になった。
母の恵美子がうれしそうにテーブルを準備する。東側の窓から、月の裏側を通るノストラダムスが見えるはずだ。
反論もできず、旭はカーテンを開けた。
六ヶ所村は太平洋に面している。高台にある官舎からは、直に東の水平線を臨めた。水辺線付近は行き交う船の灯りが列んでいる。星のようにまたたいているのは、船の揺れか空気の揺らぎか。
「ただいまー」
「ボンソワー」
父の明彦が帰って来た。シルビーさんの夫、ジュール・ブリューネも一緒だ。
六ヶ所村の原子力施設はフランスの協力で作られた。ブリューネのようなフランス人技師がいるのは、そのためだ。核燃料もフランスから輸入しているし、フランス無くして日本の原子力は存在しない。
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