2月

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 車は三沢基地に着いた。   航空自衛隊のゲートから入り、滑走路の横へ行く。待機していたのはC-2輸送機だった。基地祭りに来た時、遠くから見た事があった。  機体横の扉から乗り込む。座席は貨物室の壁に据え付けられていた。横座りだ。 「よお」  久麗均一が先に座っていた。手を上げて迎える。 「お爺さんもだったの?」 「今朝、自衛隊が家に押しかけて来て、強制連行されてしまった。こんな老骨を使おうとは、まだ出汁くらいは取れると思ってるらしいな」  がははは、久麗爺は豪快に笑う。  旭はとなりに座った。父の明彦も並んで座った。  シートベルトをすると、すぐに離陸した。  離陸直後の急上昇から、ほどなく水平飛行へ移る。  飛行高度は約5000メートルと説明があった。隕石の影響を避けるため、ジェット機が高度1万メートル以上を飛ぶのは禁止されている。  落ち着いたちころで、旭はバッグを開いた。母が用意してくれた荷物をチェックする。靴下に下着、タオルと洗面セットが出てきた。レジ袋の中にはラップされたバナナ、リンゴがあった。お菓子もあった。 「小学校の遠足じゃないし、母さん、気をきかせ過ぎだよ」  お菓子の袋をやぶり、久麗爺の前に差し出した。 「食べますか、六カ所村の名物『ごま六』です」 「おお、旨そうだな。脳みそを使っていると、甘い物が欲しくなる」  久麗爺は一つ取って口に入れる。いらない、と父は手を振った。  窓からは、太平洋の海岸線が間近に見えた。寄せる白波がわかった。  GPS航法衛星に障害が出ているらしい。常に地上を見て、自己位置を確認して飛んでいた。
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