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車は三沢基地に着いた。
航空自衛隊のゲートから入り、滑走路の横へ行く。待機していたのはC-2輸送機だった。基地祭りに来た時、遠くから見た事があった。
機体横の扉から乗り込む。座席は貨物室の壁に据え付けられていた。横座りだ。
「よお」
久麗均一が先に座っていた。手を上げて迎える。
「お爺さんもだったの?」
「今朝、自衛隊が家に押しかけて来て、強制連行されてしまった。こんな老骨を使おうとは、まだ出汁くらいは取れると思ってるらしいな」
がははは、久麗爺は豪快に笑う。
旭はとなりに座った。父の明彦も並んで座った。
シートベルトをすると、すぐに離陸した。
離陸直後の急上昇から、ほどなく水平飛行へ移る。
飛行高度は約5000メートルと説明があった。隕石の影響を避けるため、ジェット機が高度1万メートル以上を飛ぶのは禁止されている。
落ち着いたちころで、旭はバッグを開いた。母が用意してくれた荷物をチェックする。靴下に下着、タオルと洗面セットが出てきた。レジ袋の中にはラップされたバナナ、リンゴがあった。お菓子もあった。
「小学校の遠足じゃないし、母さん、気をきかせ過ぎだよ」
お菓子の袋をやぶり、久麗爺の前に差し出した。
「食べますか、六カ所村の名物『ごま六』です」
「おお、旨そうだな。脳みそを使っていると、甘い物が欲しくなる」
久麗爺は一つ取って口に入れる。いらない、と父は手を振った。
窓からは、太平洋の海岸線が間近に見えた。寄せる白波がわかった。
GPS航法衛星に障害が出ているらしい。常に地上を見て、自己位置を確認して飛んでいた。
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