20XX年12月

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「原爆なんか作って、何をするの? どこかの国と戦争でも始める気?」  旭の言葉に、久麗爺は人差し指を上に向けた。 「ノストラダムスが来てるだろ。あれを迎え撃つんだ」 「のすとら・・・ああ、小惑星のノストラダムスか」 「日本には発電用のウランとプルトニウムが余ってる。しかし、ノストラダムスは年明けにも来る。手間暇かけて濃縮してられん。発電用を、そのまま原爆にできるなら、とな」  久麗爺は仁王のような顔で言う。本気で原爆を作りたいみたいだ。  旭は小惑星ノストラダムスの事を思い出し、迎え撃つ必要は無いと気付いた。  その小惑星は海王星族と推定されていた。  土星と木星の引力摂動で軌道が変わり、内惑星軌道へと落ちて来た。   発見されてから、軌道の確定に1年以上の時間が費やされた。そして、地球と衝突コースにあるとされた。直径は200キロ以上、これが衝突すれば、人類は絶滅必至の大災害になる。  人々は小惑星をノストラダムスと呼んで恐れるようなった。  1年後、数十万キロの距離で地球を逸れる事が判明した。しかし、月との衝突が危ぶまれた。半年後、月と数百キロの距離ですれ違う事がわかった。またしても、終末の予言は外れたようだ。  年が明けて、初めての満月の夜、ノストラダムスは月の裏側をかすめて通り過ぎる・・・はずである。
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