20XX年12月

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「原爆や水爆なら、アメリカやロシアが持ってるよ。あっちに任せれば?」 「やつらの原爆は地球上で使うのが前提の軍事用だ。真空の宇宙では、たいして役に立たない。ピカはあっても、ドンが作れないからな」 「ドン!」  昭和20年8月6日、広島の街に爆撃があった。始めにピカッと閃光があり、次ぎにドンと衝撃波が来た。人々はピカドンと呼んで恐れた。 「リトルボーイは空中に直径300メートルのプラズマ火球を作った。直径300メートルの空気の重さは、約1万6千トンだ。1万6千トンの熱い空気爆弾が広島の街を押しつぶした。ドンの正体だ。しかし、宇宙には空気が無い。よって、どんな大威力の原爆水爆でもプラズマ火球が作れない。ノストラダムスを押して軌道を変えられないのだ」  老人の弁に熱が入る。脳が暴走してメルトダウンしないか、そこを心配したくなった。 「だから、ノストラダムス迎撃には、プラズマ火球の材料を持って行かなゃならん。爆発力は10キロトン程度だが、こいつの総重量は10トン以上。たった10トンでは、ノストラダムスを押すには力不足だが、日本が打ち上げられる人工衛星の最大重量だ。しかたない・・・」  久麗爺はうな垂れた。自分なりに、構想の矛盾点に気付いていた。  老人の脳は緊急停止したようだ。メルトダウンの心配が無くなり、旭は一息ついた。 「叔父さん、このファイルを下さい。ぼくも、ちょっと考えてみたい」 「おお、若者よ、地球を守るため、互いに知恵を出し合おう」  久麗爺はUSBメモリーをソケットに挿した。マウスをクリック、ファイルをコピーする。
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